ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは崩れた石畳の隙間に足を入れた。埃っぽい空気が鼻腔をくすぐる。
「ここか?本当にここ?」
ラーンが不機嫌そうに言った。テルヘルは冷静に周囲を見回した。
「地図に記された場所だ。遺跡の奥深くにあるはずだ」
イシェは懐中電灯を照らして隙間を覗き込んだ。
「何かある…みたいだけど、狭くて奥まで見えない」
「無理に進むな」テルヘルが制止する。「安全確認を優先だ。ラーン、お前は入り口を警戒しろ」
ラーンの不機嫌そうなため息とイシェの小さな頷きだけが返ってきた。テルヘルは石畳の隙間を慎重に探り始めた。指先に冷たい金属の感触があった。
「何か見つけた?」イシェが尋ねる。
テルヘルは小さな金色の箱を引き上げた。表面には複雑な模様が刻まれていた。
「これは…」イシェが声を失った。
箱を開けると、そこには宝石が散りばめられた小さな鏡が収まっていた。光を反射する鏡の表面に映るのは、彼ら自身の姿ではなく、歪んだ景色だった。
「何だこれ…?」ラーンの戸惑いの声だけが響く。テルヘルは目を細めた。この遺跡、そしてこの鏡には何か秘密がある。彼女は確信した。
そして、その秘密は彼女が復讐を果たすための鍵となるのだと…。