ラーンが豪快な笑いを上げると、イシェは眉間に皺を寄せた。「また大穴の話か? そんな都合の良い話があるわけないだろう」
「あるさ!いつか必ず掘り当てるんだ!」ラーンの瞳は輝き、拳を握りしめた。イシェはため息をつきながら、視線を街角の賑わいにやった。ビレーの市場はいつも活気に満ち溢れていて、様々な人々が行き交う。
「いい加減にしろよ、ラーン。そんな夢物語を語る暇があるなら、今日の探索の準備をすべきだ」イシェの言葉は冷たかったが、ラーンの熱意に触発されたようなものを感じさせる節もあった。「あの遺跡は危険だって聞いたぞ。テルヘルも慎重な態度だった」
「大丈夫だ!俺たちにはイシェがいるじゃないか」ラーンは自信満々に言った。イシェは彼の言葉を聞いて苦笑した。確かにイシェは冷静沈着で、ラーンの無計画さを補ってくれる存在だった。
その時、背後から低い声が響いた。「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろしていた。「遺跡の入口は街角の奥にある。人目を避けて行こう」
ラーンとイシェは互いに頷き合った。街角の暗い路地裏へと続く階段を下り始めた。彼らの足取りは、夢と現実の間を行ったり来たりする不安定な一歩だった。