ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェに肩を叩いた。「よし、今日はテルヘルさんの言う通り、あの遺跡だな!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「またあの危険な場所? ラーン、あの遺跡は術者の罠が張り巡らされているって噂じゃないか。あの魔物騒ぎのあとから誰も近づいてないぞ」
ラーンの顔にはいつもの自信が満ち溢れていた。「大丈夫だ! 今回はテルヘルさんがいるし、俺たちにはイシェがいるだろ? 何より、あの遺跡に眠ってるはずの『黄金の盾』を手に入れたら、ビレーで一番裕福な男になれるんだぞ!」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格に振り回されるのはもう慣れたものだった。だが、テルヘルが提示した報酬額も魅力的だったし、あの遺跡に眠るという『黄金の盾』はただの噂ではなく、歴史書にも記されていた事実だった。
深く緑に覆われた山道を行く三人の後ろを、不吉な影が静かに追っていた。それは術者の残した魔力の痕跡であり、かつてこの地で起きた悲劇の記憶だった。
遺跡の入り口には、崩れかけた石碑が立っていた。「ここに入る者、命を賭して entering と書かれているように見える」イシェは石碑に刻まれた文字を声に出した。「ラーン、本当に大丈夫か? 」
ラーンの表情は一瞬曇ったが、すぐにいつもの明るい笑顔に戻った。「大丈夫だ! 俺たちは運がいいんだ。それに、テルヘルさんがいるだろ?」
テルヘルは口元を引き締めていた。「遺跡の奥には強力な術者の罠がある可能性が高い。慎重に進もう。」彼女の言葉に重みがあった。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な模様が刻まれていて、不気味な光を放っている。ラーンは剣を構え、イシェは daggers を手に緊張した表情で周囲を見回す。テルヘルは静かに前へ進み、時折手を伸ばして壁の模様に触れる。
「ここだ」テルヘルが言った。目の前に広がるのは巨大な石室だった。中央には、金色の光を放つ盾が置かれていた。
ラーンの目は輝き、イシェも思わず息を呑んだ。だが、その時、床から黒い影が立ち上がり、三人を襲いかかった。それは術者の残した魔力の亡霊であり、強力な攻撃と幻覚を操る恐ろしい存在だった。