「おい、イシェ、この壁、どうだ?」ラーンが岩肌を叩いて音を立てる。イシェは眉間に皺を寄せて壁の模様を確かめた。「ただの石組みじゃないみたいだな。でも、どこかに仕掛けがあるとは思えん。ラーン、無駄な期待しないでくれよ。」
「そうかな?もしかしたら、ここが秘密の通路だったりして!」ラーンの目は輝き、興奮気味に壁をこすった。すると、かすかな音がした。「あれ?」イシェも耳を澄ました。「何か聞こえるぞ…」
その音は石の擦れるような音だった。ラーンとイシェは息を呑んで互いに顔を見合わせた。慎重に壁を押してみるが動かない。「どうだ?開くかと思ったんだけどな」ラーンの肩が落込む。「待て、ちょっと…」イシェが壁をもう一度撫でた。すると、壁の一部がわずかに沈み込んだ。「ここだ!」
イシェは力を込めて壁を押すと、石の板がゆっくりと回転し始めた。奥に暗い通路が現れた。「やりました!やっぱり秘密の通路だったじゃないか!」ラーンは興奮して飛び込んだ。イシェはため息をつきながら彼の後を続けた。
通路は狭く、湿った空気が漂っていた。進んでいくと、やがて壁一面に古い絵画が描かれている部屋に出た。「これは…?」イシェは壁に描かれた複雑な模様をじっと見つめた。「何か記号みたいだな…」ラーンは興味なさげに壁を指さした。「何だろうね?宝の地図か?」
イシェは首を振った。「そんな単純なものではないと思う。何か重要な意味があるはずだ…でも、何を表しているのか…」その時、イシェが床に目を落とす。「あれ?ここには…」床に描かれた小さな記号。それは、壁画とつながるように配置されていた。
「ラーン、見てくれ」イシェは指で記号をなぞった。「これは…行き止まりを示す記号じゃないか?」ラーンの顔色が変わった。「え…?行き止まり?どういうことだ?」イシェは真剣な表情で言った。「この遺跡、もしかしたら…私たちを騙しているのかもしれない…」