「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂によると、奥深くには王家の墓があるらしいぞ」ラーンの目が光った。イシェは眉間にしわを寄せ、「また大穴の話か。そんな安易な夢を捨てて、現実的な仕事を見つけようよ」とため息をついた。
「現実的な仕事?遺跡探索以外に何が出来るんだい?」ラーンはそう言うと、笑いかけてイシェの肩を叩いた。「ほら、テルヘルさんだって大金を出すって言ってるぞ。それに、あの塔にはきっと何かあるはずだ。俺の直感が言ってるんだ!」
テルヘルは冷ややかな目で二人を見下ろした。「直感?くだらない。私は結果を求める。王家の墓が実在するなら、そこに眠る宝こそが私の目的だ」彼女の言葉に、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。テルヘルの目的は、単なる金ではなかったようだ。
崩れた塔の内部は、湿気と埃が充満し、朽ち果てた石畳が続く暗い場所だった。ラーンは先頭を走り、イシェは彼の後をゆっくりと進んだ。テルヘルは二人を見つめながら、何かを考え込んだように沈黙を守っていた。
深く進むにつれて、壁に描かれた壁画が目に入った。それは、王家の血筋を描いた壮大な叙事詩だった。かつて栄えた王国、その繁栄と崩壊、そして最後の王の悲劇。イシェは壁画に目を留め、歴史に埋もれた物語に心を奪われた。
「この塔はただの遺跡じゃない」イシェは呟きながら、壁画を指さした。「王家の墓を守る場所であり、彼らの歴史を伝える場所なんだ」ラーンの顔色が変わった。「そうか…つまり、この塔には王家の血筋の秘密が隠されているのか?」
テルヘルは静かに頷き、鋭い目でイシェを見つめた。「そう、そしてその秘密は、私の復讐に必要不可欠なものだ」彼女の言葉から、冷酷な意志を感じ取ることができた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。この遺跡探索は、単なる財宝を求める冒険ではなく、血と復讐の物語の始まりだったのだ。