「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると奥に秘室があるらしいぞ」
ラーンが目を輝かせ、遺跡の入り口へと向かう。イシェはため息をつきながら後に続く。
「またしても噂話で? そんな大穴になるわけないだろう」
「おいおい、イシェ。お前もたまには夢を持たないとダメだぞ!いつか俺たちの大穴が見つかる日が来る!」
ラーンの言葉にイシェは苦笑する。彼はいつもそうだった。大穴を夢見て遺跡探しの日暮らしを続けている。しかし、イシェは現実的な思考の持ち主だ。
「大穴なんて見つからない。それに、この遺跡はヴォルダンの軍が以前調査したらしいぞ。危険かもしれない」
だがラーンは耳を貸さず、すでに塔の中へ入っていく。イシェは仕方なく後を追う。
テルヘルは二人を見つめるようにして静かに歩を進めた。彼女の目的は遺跡の遺物ではない。ヴォルダンへの復讐のため、彼女は情報を探していた。そのために、この二人は必要だった。
塔の中は薄暗く、埃が舞い上がっていた。崩れた石畳を慎重に進む二人。ラーンは興奮気味に周囲を見回し、イシェは警戒しながら後ろを確認する。
「ここだな。何か感じるぞ…」
ラーンの指先が震えていた。彼は壁のひび割れから赤い光を見つけ、興奮の声を上げた。
「これは…!」
彼は壁を叩き始めた。すると、壁の一部が崩れ落ちた。その奥には小さな部屋が広がっていた。部屋の中央には、脈打つような赤色の球体が浮かんでいた。
「なんだあれ…」
イシェは言葉を失った。ラーンは目を輝かせながら球体へと歩み寄る。その時、球体は突然大きく膨張し、部屋中に赤い光を放った。
二人は目を shielding して顔を背けた。そして、光が収まったとき、そこには何もなかった。球体も、ラーンの興奮も、全て消えていた。
「あれは…?」
イシェは呆然と立ち尽くす。ラーンも言葉を失い、ただ空を見上げていた。その時、彼は自分の腕に何かを感じた。
赤い光が消えた後も、彼の血管の中に、脈打つようなものが流れていることに気づいた。まるで…血球のように。