ラーンの大斧が石の壁を切り裂き、埃が舞い上がった。
「よし、これで開けられるはずだ!」
彼は胸を躍らせ、イシェが持つ松明を差し出した。薄暗い奥へと光が射し込んだ瞬間、冷たい空気が彼らを包み込んだ。
「やっぱり遺跡か…。」イシェは眉間に皺を寄せた。「あの噂は本当だったのか…」
このビレー周辺には、何年も前から奇妙な噂が広まっていた。古代の文明が残した遺跡群の存在だ。そして、その遺跡から流れ出る不思議な力…。
「大穴」だとラーンは興奮気味に言った。「きっとここで待ってるはずだ!」
イシェは彼の熱気に押されながらも、どこか不安を感じていた。この遺跡は他のものとは違っていた。空気が重く、まるで何かがじっと見つめているような気がした。
「ここには危険な罠があるかもしれないぞ」とイシェは言った。「慎重にやろう。」
だがラーンの耳には届いていなかった。彼はすでに奥へと進んでおり、石畳の上を軽快に駆け抜けていた。イシェはため息をつきながら、テルヘルと共に彼を追いかけた。
遺跡の奥深くでは、何やら不気味な光が脈打っていた。それはまるで、生きた心臓のように血流していた。
「これは…」
テルヘルは言葉を失った。彼女の目は鋭く光り、何かを察知したようだった。
突然、壁から鋭い音が響き渡り、ラーンが振り返ると巨大な石柱が彼に向かって落ちてくるのを目にした。
「ラーン!」
イシェの叫びが、石柱を打ち抜くような音に飲み込まれた。埃が立ち込める中、ラーンの姿が見えなくなった。
「ラーーン!」
イシェは叫びながら石柱の残骸をかき分け、血まみれの剣を見つけ出した。ラーンは…生きているのか?