「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂によると、地下には古代の祭壇が残っているらしいぞ」ラーンの声がビレーの宿屋に響き渡った。イシェは眉間にしわを寄せながら彼を見つめた。「また噂話か？ いつになったら現実的な目標を持つんだい？」
「でも、もし本当なら大金持ちになれるんじゃないか？ イシェも一緒に夢を抱いてみないか！」ラーンの瞳は希望に満ち溢れていた。イシェはため息をつきながらも、結局はラーンについていくことに決めた。
彼らの前に現れたのは、黒曜石のような瞳を持つ謎の女性、テルヘルだった。彼女は冷酷な美しさと同時に、どこか悲しみを湛えた雰囲気を漂わせていた。「噂は真実だ。あの塔にはかつて強力な血族が秘めた遺宝がある。我々はその力を手に入れ、ヴォルダンに復讐を果たすのだ。」
テルヘルの言葉は重く響いた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。ヴォルダンへの復讐という目的は彼らにとって未知の世界だったが、テルヘルの強い意志と、遺跡探検の報酬という現実的なメリットが彼らを突き動かした。
崩れた塔内部は暗く湿っていた。埃っぽい空気を吸い込みながら、三人は慎重に進んでいった。イシェは足元に落ちている破片を拾い上げ、古代文字を読み解こうとした。「これは…血族の紋章だ。この塔は彼らが築いたものなのかもしれない…」
ラーンの剣が光る中、彼らは地下深くへと降りていった。そこには、朽ち果てた祭壇と、その上に置かれた奇妙な石棺があった。テルヘルは興奮した様子で石棺に近づき、手を差し伸べた。「ついに…我々の復讐の始まりだ…」
その時、石棺から黒い霧が立ち上り、三人の周りを包み込んだ。霧の中から不気味な声が響き渡る。「汝らは血族の力を目覚めさせようとするのか？ 愚かな者たちよ… 」