ラーンの豪快な笑い声がビレーの喧騒を掻き消す。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の背後から「もう少し静かにしろ!」と叱りつけた。ラーンは陽気に笑って「お前も楽しめよ!今日は大穴が見つかる予感がするんだ!」と答える。
イシェはため息をつきながら、テルヘルの指示書を確認した。「今回はヴォルダン遺跡の周辺だそうだ。危険度が高いとのことだが、報酬も相当なものらしい」と呟く。ラーンは「危険なんて気にすんな!俺たちに敵はないぞ!」と胸を叩いて宣言するが、イシェはテルヘルと目が合い、互いに頷き合った。
ビレーから少し離れた場所に建つ、ヴォルダン遺跡の入り口には、警戒の兵士たちが配置されていた。テルヘルは偽造書類を巧みに使いこなすことで、彼らを騙し通した。遺跡内部は薄暗く、湿った空気と埃が立ち込めていた。
「ここは以前、ヴォルダンの魔術師が儀式を行っていた場所らしい」とテルヘルが説明する。「目的の遺物は奥深くにあるはずだ」
ラーンは不気味な雰囲気に呑まれながらも、剣を構えて先頭に立つ。イシェは後ろから彼の様子を見守り、常に警戒していた。遺跡の奥深くに進むにつれて、壁には奇妙な呪文が刻まれており、時折、不気味な音が響き渡る。
やがて、彼らは広大な地下空間へとたどり着いた。中央には巨大な祭壇があり、その上に光り輝く石碑が置かれていた。ラーンの目の色が変わった。「これは!大穴だ!」と彼は興奮して叫んだ。しかし、イシェは何かを察知したように不安げな表情を見せる。
「待て、ラーン。何か変だ…」とイシェが言うと、その瞬間、石碑から怪光が放たれ、空間全体に広がった。ラーンの体は光に包まれ、苦しみ始めた。イシェはラーンの手を掴もうとするが、光は彼を突き飛ばし、壁に叩きつけた。
「ラーン!」
イシェは立ち上がり、テルヘルと共にラーンのもとへと駆け寄る。しかし、ラーンの姿は既に消え失せていた。代わりに、そこにあったのは、ヴォルダン軍の紋章が刻まれた鎧を着た兵士だった。
テルヘルは冷静に状況を判断し、イシェに「今は逃げろ!私はこの場を収拾する」と言い残し、剣を抜いて兵士に立ち向かう。イシェは深い悲しみと怒りで胸を締め付けられながらも、テルヘルの指示に従い、遺跡から逃走した。
ビレーに戻ったイシェは、ラーンの行方を知るために、テルヘルと共に調査を開始する。二人は協力し、ヴォルダンの陰謀に挑むことになる。彼らの前に広がるのは、激しい戦いと、失われた「蜜月」の記憶が色濃く残る、残酷な現実だった。