ラーンの大笑い声がビレーの夕暮れにこだました。
「ほら見ろイシェ、今日の収穫だ!」
彼の足元には、錆び付いた剣と、みすぼらしい壺が転がっていた。イシェはため息をつきながら、それを確認した。
「またこんなもの?ラーン、この遺跡は本当に財宝があるのか?」
「あるに決まってるだろう!いつか大穴が見つかるさ!」
ラーンの瞳は自信に満ち溢れていたが、イシェにはどこか不安な予感がした。最近、ラーンの行動に奇妙な熱意が感じられるのだ。
そんな時、テルヘルが姿を現した。「今日はここまでだ」
彼女はいつもより冷たい声で言った。ラーンの様子を伺いながら、イシェに目を向けた。
「次の遺跡は、ヴォルダン国境に近い場所だ。危険だが、そこには大きな成果が期待できる情報がある」
イシェは心臓が跳ねるのを抑えきれなかった。ヴォルダンとの国境とは…。あの国では、今まさに何かが動こうとしているという噂を耳にしていた。
「テルヘル、なぜそこに?」
ラーンが問いかけた。テルヘルは答える前に、視線を遠くの夕陽にやった。
「私の復讐のために…」
彼女の言葉は風に乗って、イシェの耳に届いた。
その夜、イシェは眠れなかった。テルヘルの言葉、ヴォルダンとの国境、そしてラーンの熱意。どれもが不安と期待を掻き立てる。
ビレーの人々は、いつからか不穏な空気に包まれていた。街の tavern で耳にした噂話。ヴォルダンからの密使、武器の買い占め、そして「蜂起」という言葉…。イシェは胸の奥に冷たい恐怖を感じた。
翌日、彼らは新たな遺跡へと向かった。その道すがら、ラーンの瞳には今まで見たことのない光が宿っていた。イシェはラーンをじっと見つめた。彼はまるで、自分たちの運命が変わることを知っていたかのように、静かに笑みを浮かべていた。