ラーンの粗雑な斧の振り下ろしが埃を巻き上げ、石壁の一部を崩し落とした。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れた石の隙間を覗き込んだ。「また無駄な力仕事だな。あの奥の壁には何もないはずだ」
「ほら、イシェ、そんなこと言わずに少しは楽しまなきゃ!」ラーンは陽気に笑った。彼の瞳は虹彩のように色鮮やかで、冒険への期待が溢れていた。「いつか大穴を掘り当てたら、お前も豪邸に住んで美味しいものばかり食べれるんだぞ」
イシェは小さくため息をついた。「あの日暮らしの夢から抜け出すつもりはないのかい? いつまでそんなことを…」
その時、テルヘルが鋭い声で叫んだ。「待て!何かある!」
彼女は崩れた石の下を指差していた。そこに、薄っすらと虹色の光が漏れていたのだ。イシェは一瞬息を呑んだ。あの光は、遺跡の奥深くに眠る伝説の宝「虹彩の秘宝」の兆候に似ていた。
「まさか…」ラーンは目を丸くした。「本当にあるのか?」
テルヘルは冷静に言った。「確認だ。慎重に進もう」。
彼女は剣を抜き、三人で光に向かって慎重に進んでいった。狭い通路の先には、石で出来た小さな部屋が広がっていた。中央には、虹色の光を放つ球体が浮かんでいた。それはまるで虹彩のように様々な色が織りなす美しい模様で満たされていた。
「これが…虹彩の秘宝か…」イシェは息をのんだ。
ラーンは興奮気味に球体を触ろうとしたが、テルヘルは彼の手を掴んで制した。「待て!あの球体はただの宝ではない。危険だ」
その時、球体が突然激しく輝き始めた。部屋全体が虹色の光で満たされ、三人は目を細めた。その瞬間、彼らの頭に様々な幻影が浮かび上がってきた。壮大な風景、忘れられた歴史、そして…未来への予言。
イシェは一瞬、自分の未来を垣間見た気がした。そこには、ラーンとテルヘルと共に戦う姿、そして…どこか遠くで待つ人の顔があった。虹色の光が消えると同時に、幻影も消え去った。
「何だったんだあれは…」ラーンは混乱した表情を見せた。
テルヘルは深く息を吸い、「あの球体は未来を映す力を持つようだ。そして、それは我々を導く鍵となる」と語った。彼女の瞳には、今までに見たことのない強い決意が宿っていた。