ビレーの夕暮れはいつもより早く訪れた。灰色の雲が空を覆い、街の灯りが不気味に揺らめいていた。ラーンは酒場でイシェと向かい合っていた。彼の目の前には空っぽの杯が並んでいた。
「また失敗か?テメーには才能がないのか?」
イシェは眉間に皺を寄せながら言った。ラーンの豪快な笑い声は、いつも通り、虚勢に満ちていた。
「気にすんな。次は必ず大穴だ!」
ラーンはそう言うと、杯をテーブルに叩きつけ、立ち上がった。イシェはため息をつき、ラーンの後を追いかけた。外では雨が降り始めていた。
テルヘルが待っている場所へ行くには、暗い路地を通らなければならなかった。ラーンの足取りは重く、イシェの視線を感じながらも、背筋を伸ばそうとした。
「何か隠していることがあるのか?」
イシェの声にラーンは振り返らずに言った。
「別に。ただ疲れているだけだ」
テルヘルはいつものように影のある場所に立っていた。彼女の鋭い視線は、ラーンの虚勢を一瞬で貫いた。
「今日の収穫は?」
テルヘルはそう問いかけた。ラーンの顔色が変わった瞬間、イシェは彼の背中に何かを感じた。それは、今まで見たことのないような恐怖の色だった。
「今日は…何も見つからなかった」
ラーンの声が震えていた。テルヘルは少しだけ笑みを浮かべた。その笑顔は虚飾に満ちていた。
「そうか。では、明日は何を手に入れるつもりだ?」