ビレーの薄暗い酒場「三つ角」のテーブルにラーンとイシェが座っていた。向かいにはテルヘルが冷えた酒を一口飲み干す。
「今日は収穫少なすぎたな」ラーンは肩を落とした。
イシェは小さな袋から採れた水晶を数えていた。「それでも、先週より少しは多いんじゃないか?」
「そうだな…」ラーンの顔は曇ったままだった。彼らが遺跡から持ち帰った水晶は市場価格で換算しても、酒と食費を賄う程度にしかならなかった。大穴を夢見る彼にとって、それは惨めな現実だった。
テルヘルは鋭い目つきで二人を見据えた。「次は違う遺跡に行く。より深い場所だ。危険だが、報酬も大きい」
ラーンの目は輝きを取り戻した。「よし!行くぞ!」
イシェはため息をついた。ラーンの無謀さはいつも彼女を心配させた。しかし、テルヘルの提案には何か引っかかるものがあった。彼女はテルヘルの瞳に宿る冷酷な光を感じた。それはまるで、獲物を狙う猛獣のようだと思った。
「イシェ、大丈夫か?」ラーンの声に引き戻されたイシェは小さく頷いた。「うん、大丈夫…行こう」
三人は酒場を後にした。ビレーの夜風に吹かれながら、イシェは虚ろな気持ちになった。どこかで、自分がこの冒険から抜け出せないような気がしていた。それはまるで、深い沼地に足を踏み入れてしまったような、逃れられない感覚だった。