「おいイシェ、この地図、本当に信頼できるのか？ あれ、あの岩肌の模様…なんか違うような気がするぞ？」ラーンが眉間に皺を寄せながら、ぼろぼろの羊皮紙地図を指さした。
イシェは視線を地図から上げ、ラーンの顔色を伺った。「落ち着いて。確かに少しズレがあるかもしれないけど、大まかな位置関係は間違いないはずよ。それに、あの岩肌の模様…確かに今とは違うような気がするわね。」
「やっぱりな！ だから言ったろって！」ラーンが声を荒げた。「あの遺跡、本当にここにあるのか？ もしかしてテルヘルに騙されてないか？」
イシェはため息をついた。「可能性はゼロじゃない。でも、テルヘルが嘘をつく理由もないし、この遺跡の情報を手に入れるために、ここまで苦労したとは思えないわ。」
「そうだな…でもな…」ラーンの顔色は曇り、「あの女、何か隠してるような気がするんだ。」
イシェはラーンの言葉に深く頷いた。テルヘルは謎が多い女性だった。ヴォルダンへの復讐を誓うという言葉を放ち、その冷酷さと冷静さには恐れすら覚えた。だが、同時に、どこか哀しげな影をまとっていた。
「とにかく、今は遺跡を探検することに集中しよう。」イシェは毅然とした声で言った。「もし本当に罠だと気づいたら、すぐに引き返せばいい。それに…」イシェは少しだけ笑顔を見せた。「もし、本当に大穴が見つかったら？ 私たちの夢が叶うんだぞ、ラーン。忘れちゃいけないよ。」
ラーンの顔色も少しずつ明るくなった。イシェの言葉はいつも彼を奮い立たせる力を持っていた。二人は互いに頷き合い、再び遺跡へと足を踏み入れた。彼らの足音だけが、静寂に響く遺跡の中で、不気味なエコーを生み出した。