冷たい風がビレーの街を吹き抜けた。薄明かりが空を染め始めた時、ラーンはイシェを起こしに出かけた。
「今日はテルヘルが遺跡指定した場所に行くんだろ？あの辺りは特に危険らしいぞ」
イシェは眠たそうにうなずいた。
「そうだな。準備はいいか？」
ラーンの問いかけにイシェは小さく頷き、荷物を背負った。テルヘルは既に街の端で馬を待ち構えていた。薄暗い顔つきに緊張が走っていた。
「今日は重要な日だ」
テルヘルはそう言うと、馬に跨り、二人が続くように道に進んだ。遺跡に向かう道は険しく、日が昇るにつれ霧が立ち込め始めた。薄明かりが霧の中に溶け込み、視界を悪くした。
「ここは以前、ヴォルダンの軍勢と激戦があった場所らしい」
テルヘルが言った。ラーンは剣の柄を握りしめ、イシェは周囲を見渡しながら歩を進めた。
遺跡の入り口は崩れかけており、内部は薄暗く不気味な雰囲気に包まれていた。テルヘルは先頭で進み、ラーンとイシェはその後ろを続いた。遺跡の中は複雑な構造で、迷路のように入り組んでいた。
「ここだ」
テルヘルが足を止めた時、薄明かりが壁の奥から差し込み、壁画の一部を照らした。そこには古代の文字が刻まれており、テルヘルは興奮気味に読み始めた。
「これは...ヴォルダンが隠していた秘密兵器の設計図かもしれない！」
彼女の言葉にラーンとイシェも息を呑んだ。
その時、背後から不気味な音が響き渡った。薄明かりの中で何かが動いているのが見えた。
「敵だ！ 」
ラーンの叫びと共に、三人は剣を抜いた。