ラーンの粗雑な剣の扱いが埃を巻き上げ、イシェの鼻を痒くさせた。彼女はため息をつきながら、鼻を揉みながら言った。「また遺跡に潜る前に、せめて掃除くらいしろよ」。ラーンは苦笑いし、「そんなことより、テルヘルがくれた地図見てみるか？」と切り替えようとした。
「今回は大物らしいぞ。ヴォルダンとの国境に近い遺跡で、古代の兵器が残されている可能性があるんだって」
イシェは眉をひそめた。「大物なら大物でも、あの地図には危険を示すマークがいくつもついているじゃないか。一体どれだけの危険を冒してまで？」
「危険？そんなもん、俺に任せとけ！」ラーンは豪快に笑った。だがイシェは彼の笑顔の裏にある不安を感じていた。テルヘルとの契約は、彼らにとって大きな収入源であり、夢への一歩だった。しかし、その代償は大きすぎるように思えた。
「あの女は一体何のために遺跡を探しているんだろう…」イシェは呟いた。テルヘルの目的は、ヴォルダンへの復讐だと聞いていたが、それだけでは説明がつかない何かがあった。彼女はラーンの無邪気な笑顔をじっと見つめ、胸の奥底に広がる不吉な予感を押さえ込んだ。
遺跡の入り口では、テルヘルが待っていた。「準備はいいか？」彼女の鋭い視線は、二人を貫くように冷たかった。「今回は特に慎重になれ。ヴォルダンが手を出す可能性もある」
ラーンは意気揚々と剣を抜いた。「心配するな、テルヘル。俺たちには必ず勝てる！」イシェは彼の後ろで小さく頷き、遺跡へと足を踏み入れた。薄暗い通路に響く足音だけが、彼らの不安を掻き立てるようだった。