ビレーの朝はいつも薄霧に覆われていた。ラーンは寝起きが悪く、イシェを起こすために無理やり布団を剥ぎ取ると、「今日はいい遺跡があるって聞いたんだ」と興奮気味に言った。イシェはあくびしながら「また大穴の話か…」と呟いたが、ラーンの熱意には逆らえなかった。
二人はビレーの広場にある小さな食堂で朝食をとった。テルヘルは既に席についており、いつものように蒼白い顔で冷めた目つきで二人を見つめていた。今日の報酬は特に高額だった。「あの遺跡は危険だ」とテルヘルは言った。「かつて、そこでは…」彼女は言葉を濁したが、ラーンの表情に不安の色が浮かんだ。
遺跡の入り口は深い森の中にあった。空気は湿り気があり、太陽の光が届きにくかった。イシェは緊張した様子で周囲を警戒しながら歩いた。ラーンの刀は腰にしっかりと固定されていた。「大丈夫だ」とラーンは笑顔を見せたが、イシェには彼の声が少し震えているように聞こえた。
遺跡内部は暗く、石畳の床は苔むしていた。壁には蒼白な模様が描かれており、まるで何かの警告のようだった。テルヘルは古い巻物を開き、複雑な記号を指さしながら「ここには…」と説明した。
突然、地面が揺れた。天井から岩が崩れ落ち、ラーンはイシェを庇って身をかわした。テルヘルは冷静に状況を把握し、「罠だ」と叫んだ。その時、壁の奥から何かが動き始めた。蒼白な影が彼らを襲う。