ビレーの薄暗い酒場には、いつもより多くの男たちが詰めかけていた。ラーンとイシェがカウンターに着くと、テルヘルがそっと手を振った。彼女はいつものように黒づくめの衣装で、鋭い目つきを向ける。
「今日は何か用事があるのかい?」ラーンはにこやかに尋ねた。イシェはテルヘルの表情に何かあると感じていた。いつも冷静沈着な彼女は、どこか落ち着きがないようだった。
「情報を得た」テルヘルは低い声で言った。「ヴォルダンが遺跡の調査を強化しているらしい。目的は不明だが、特定の遺物を蒐集している可能性が高い」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…」。彼はかつてヴォルダンの兵士に襲われた経験があり、その憎悪を深く刻んでいた。イシェも緊張した様子でテルヘルを見つめた。
「何を探しているのか、そしてなぜ?」イシェが尋ねた。
「それはわからない」テルヘルは言った。「だが、我々にとって重要な情報は一つある。ヴォルダンは特定の記号を持つ遺物を特に重視しているらしい。それが何なのか、そしてどこにあるのかを突き止めることができれば…」彼女は言葉を濁し、ラーンとイシェを見つめた。「大きな報酬が得られるだろう」
ラーンの瞳に闘志が燃え上がった。「ヴォルダンに邪魔をさせないぞ!」彼は剣を握りしめ、決意を表明した。イシェはラーンの熱気に押されながらも、どこか不安を感じていた。ヴォルダンとの戦いは避けたい。だが、テルヘルの言葉には何かが隠されているように感じた。
「その記号とは…一体何なのか?」イシェは尋ねたが、テルヘルは答えずに simply 頷いた。彼女の表情は、謎を秘めた闇のように深いものだった。