冷たい風がビレーの街を駆け抜けた。ラーンがイシェに肩を叩き、「今日はいい感じだな!大穴が見つかる予感がするぜ!」と豪快に笑う。イシェは彼の無邪気さに苦笑しながら、視線を落葉の舞う空へと向け、「そんな甘い考えは捨てなさいよ。遺跡探検は運任せじゃないわ」と冷静に返す。
「運も実力の一部だ!それにほら、テルヘルさんが高い報酬を払ってくれるんだろ?」ラーンが目を輝かせると、イシェはため息をついた。「あの女性は危険な香りがするわ。目的のためなら手段を選ばないタイプよ」。
テルヘルは今日もいつものように、鋭い眼光で地図を広げていた。彼女の顔は影に覆われ、表情を読むことは難しい。だが、その瞳の奥には燃えるような炎が宿っていることをラーンとイシェは知っていた。ヴォルダンへの復讐心、それは彼女を突き動かす原動力であり、彼らを引き込む危険な魅力でもあった。
「今日はあの遺跡だ。過去の記録によると、そこには強力な魔物が封印されているらしい」テルヘルが口を開くと、ラーンの顔が硬くなった。「魔物か…こりゃ厄介だな」。イシェは冷静に、「準備は万端ですか?魔物対策の装備は?」と確認する。
テルヘルは頷きながら、「安心しなさい。私はあらゆる可能性を考慮した」と答えた。だが、彼女の言葉の裏には、何か隠されているような気がした。
遺跡の入り口は、落葉で覆われた石畳に囲まれていた。かつて栄華を極めた文明の痕跡が、今は朽ち果てた姿で静かに佇んでいる。ラーンは緊張した表情で剣を抜くと、イシェも小さな daggersを握りしめた。
テルヘルは先陣を切って遺跡の中へと踏み込んだ。彼女の背中は、まるで燃えるような炎のように、周囲の闇を切り裂くように輝いていた。