ラーンの大笑い声がビレーの街並みを駆け巡る。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼を追いかけるように遺跡から戻ってきた。
「また無駄な時間を使うなと言っただろう!あの廃墟には何もなかったはずだ」
イシェが言う通りだった。日暮れの柔らかな光が差し込む廃墟の入口で、ラーンは落胆した表情を浮かべていた。
「いや、でもね、あの壁画…よく見ると、落ち葉の形をしているんだよな。もしかしたら、何か意味があるんじゃないか?」
イシェはため息をついた。「落ち葉?そんなものに意味があるわけないでしょう。ラーン、現実を見なさい。私たちには時間がない。次の仕事を探さないと」
だがラーンの目は輝いていた。「いや、この遺跡は違う!俺に何かを伝えようとしている気がするんだ!」
その瞬間、テルヘルが彼らの前に姿を現した。彼女の鋭い視線は、まるでレーダーのように周囲をくまなく探り当てているかのようだ。
「何をしている?」
テルヘルの冷徹な声にラーンとイシェは驚いた。
「あ、テルヘルさん、ちょうど…」
ラーンの言葉を遮るように、テルヘルは廃墟の壁画へと視線を向けた。「落ち葉か…面白い」
彼女は薄く唇を動かした。「この遺跡には何かあるかもしれない。情報収集を続けよ。特に、落ち葉の形に注目しろ」
そして、テルヘルは静かに去っていった。彼女の背中には、まるで燃えるような意志が宿っているように見えた。ラーンの無邪気な好奇心とイシェの慎重な思考、そしてテルヘルの冷酷な策略が交錯する中、ビレーの街に新たな影が忍び寄っていた。