ラーンが剣を地面に突き立てて息を切らしているのを見れば、イシェはため息をついた。「またか?」
「何だ、イシェ。大穴が見つかる予感がするんだ!」
ラーンの目は輝いており、興奮気味に草原に広がる遺跡の入り口へと向かった。イシェは彼を追いかけるようにして遺跡の中へ入った。ここは、ビレーから少し離れた場所で、かつて巨大な王宮があったと言われる場所だった。今は崩れ落ちた石柱や壁が風に揺られるのみだが、かつての栄華を偲ばせる美しさは残っていた。
テルヘルは二人をじっと見つめていた。「あの遺跡は危険だと言われているぞ。特に奥深くには…」
「大丈夫だ、テルヘル。俺たちにはラーンがいるじゃないか!」イシェがそう言うと、ラーンの顔色が少し曇った。彼はいつも自分の強さに頼りすぎていることを自覚していた。だが、イシェの言葉に勇気づけられることも多かった。
遺跡の奥深くへと進むにつれて、空気が重くなっていった。壁には奇妙な模様が刻まれており、冷たい風が吹き抜けるたびに不気味な音がした。ラーンは剣を握りしめ、イシェは小さなランプを手にし、慎重に歩を進めた。
突然、地面が崩れ始め、ラーンの足元から深い穴が開いた。彼はバランスを崩して転落しそうになったが、イシェが素早く手を伸ばし、彼を引き上げた。
「危ない!」イシェの声が響き渡った。ラーンは息を切らしながら立ち上がり、穴の奥を覗き込んだ。そこには、広大な草原が広がっていた。見渡す限り緑で覆われており、太陽の光が降り注いでいる。それはまるで、この遺跡とは別の世界だった。
「これは…」テルヘルは目を丸くし、言葉に詰まった。「まさか…」
ラーンとイシェも言葉を失い、ただその景色を眺めていた。彼らは、自分たちが探していた大穴を見つけたのかもしれない。しかし、その先に何が待ち受けているのか、誰も知る由もなかった。