ビレーの夕暮れはいつもより早く訪れた。ラーンの背中は日焼けして赤く、汗で濡れた布地が肌に張り付いていた。イシェは少し離れた場所で、慎重に発掘した遺物を整理していた。
「今日はダメだったな」
ラーンはそう言ってため息をつき、剣を地面に立てかけた。イシェは小さく頷いて、小さな箱に遺物を丁寧に納めた。「今日は特に収穫がないね」。
テルヘルは二人が疲れた様子を見つめながら、薄暗い瞳で何かを考え込んだ。「収穫がないということは、まだ見過ごしているものがあるということだ」と彼女は言った。「明日も探索しよう。そして、その先に何が待っているのか確かめてみよう」。
ラーンの顔にはいつもの笑顔が戻り、「そうだな!必ず大穴を掘り当てるぞ!」と彼は叫んだ。イシェは彼の背中に手を置き、小さく微笑んだ。だが、彼女の心は少し沈んでいた。この遺跡探索は、いつまでも続くのだろうか?いつか、本当に「大穴」が見つかるのだろうか?
その夜、ビレーの酒場で賑やかな笑い声と共に酒を飲みながら、ラーンはテルヘルに近付いて言った。「お前、ヴォルダンについて話したことがないな」。テルヘルの表情が硬くなった。「あの国には何もない。忘れたい過去だ」と彼女は冷たく答えた。
イシェはラーンの視線を感じ、そっと席を立って店外に出た。夜空には星が輝いていた。ビレーの灯りが遠くまで届いているのが見えた。いつか、この街を離れる日が来るのだろうか?イシェは深く息を吸い、苦甘な気持ちを抱きしめながら、その答えを見つけるために歩き始めた。