日差しが容赦なくビレーの街を焼き付ける午後の時間帯だった。ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺を見てため息をついた。
「またあの顔か、イシェ。そんなに苦しそうなら遺跡探索なんてやめちまえよ。」
イシェは小さくため息をつきながら、色褪せた地図を広げた。「だが、この依頼は報酬が良い。それに…」と彼女は言葉を濁す。ラーンの目の前に広がるのは、かつて栄華を誇った文明の残骸。今は朽ち果てた石造りの壁が、色褪せた太陽の下で静かに佇んでいた。
「あの遺跡には何かあるって、テルヘルが言ってたんだろ？」
イシェは頷く。「彼女はヴォルダンに関する情報を得られるかもしれないと言っていた。」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…。」
彼にとってヴォルダンは遠い昔に起きた出来事であり、色褪せた記憶の端っこにある名前だった。しかし、テルヘルの激しい復讐心と、その言葉から滲み出る憎悪を目の当たりにする度に、ラーン自身も胸に何かが疼くのを感じていた。
「よし、行くぞイシェ！」
ラーンの声はいつものように明るく、希望に満ち溢れていた。しかし、イシェは彼の瞳に映る影を見逃さなかった。色褪せた記憶の中に眠る真実を、彼らは今、この遺跡の中で探そうとしていたのだ。