ラーンの汗が頬を伝う。遺跡の奥深く、薄暗い通路を進む彼らをイシェの視線が冷たく追っていた。 いつも通りの荒々しい動きをするラーンとは対照的に、イシェは足音一つ立てずに静かに進んでいた。テルヘルは二人を見下ろすように歩み、その鋭い眼光が壁に反射した。
「ここだ」
テルヘルが声を落とすと同時に、ラーンの目の前で壁の一部がゆっくりと沈んでいった。その奥には、青白い光を放つ巨大な石棺が鎮座していた。
「噂の『夢幻の玉』か…」
イシェは呟きながら、石棺に近づいていくラーンの背中に手をかけた。その瞬間、石棺から冷たい風が吹き出した。そして、棺の蓋がゆっくりと開く。
中からは、宝石のように輝く美しい女性が現れた。長い黒髪を unbound に流し、真っ赤な唇を少しだけ開けていた。その姿はまるで、眠りから覚めたばかりの精霊のようだった。ラーンの視線は彼女の白い肌に釘付けになった。
「これは…」
テルヘルが言葉を失う。イシェも息を呑んだ。それは、伝説に語られる『夢幻の玉』そのものであり、その美しさは想像をはるかに超えていた。
ラーンは、意識を失いかけながらも、その女性に向かって手を伸ばした。その瞬間、女性は微笑み、ラーンの腕の中に抱きついた。そして、彼の耳元で囁いた。
「さあ、私と一緒に永遠に眠りましょう…」
その声は、甘美な毒のようにラーンの心を蝕んでいった。