ラーンの大笑い声がビレーの朝の静けさに響き渡った。
「よし、今日は必ず何か掘り出すぞ!イシェ、お前もワクワクしてるだろ?」
イシェは小さくため息をつきながら、ラーンが持ってきた粗末な地図を眺めた。遺跡の位置を示す印は、まるで子供の落書きのようだった。
「ラーン、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるわ。あの辺りはヴォルダンの兵士が頻繁にパトロールしてるって…」
「そんなの関係ない!俺たちは運がいいんだ。必ず何か見つかる!」
ラーンの自信に満ちた声に、イシェは苦笑した。いつも通りのラーンだ。しかし、今回は何かが違う気がした。テルヘルからの依頼内容が、今までとは明らかに異なっていたのだ。
「今回は特別だ。あの遺跡には、ヴォルダンが密かに運び出したという『船』の設計図があるらしい。」
テルヘルの鋭い視線が、二人の前に広がる地図に突き刺さるように感じられた。
「船…?一体どんな船なんだ?」
イシェは疑問を口にした。テルヘルは不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「それはお前たちが遺跡で確かめてくることだ。」
ビレーを出発し、険しい山道を進む三人の後ろ姿が、夕日に照らされて長く伸びていく。彼らは、知らず知らずのうちに、大きな渦の中に足を踏み入れていたのだ。