「おい、イシェ、あの石碑、どう見える?」
ラーンが指差す方向には、崩れかけた石造りの壁に、奇妙な文様が刻まれた石碑が立っていた。イシェは眉をひそめて近づき、石碑の表面を撫でながら、細かな文字列を確かめた。
「これは…ヴォルダンで使われている古い言語だ。意味は解読できるけど、内容が難しい…」
ラーンの顔色が明るくなる。「よし!古代遺跡の地図か何か書いてあるかもな!」
イシェはため息をついた。「そんな甘い話はないわよ。この文字列は呪文や儀式に関するものみたい。危険な場所を示している可能性もある」
「危険?そんなん、探検の醍醐味だろ?」
ラーンは意気揚々と石碑に手を伸ばそうとしたが、テルヘルが鋭い視線で彼を制止した。
「待て。この文様、どこかで見たことがある」
テルヘルは石碑の模様をじっと見つめ、過去の記憶をたどるように目を細めた。「ヴォルダン王家の紋章に似ている…そして、この場所…」
彼女は地図を広げ、指で遺跡の位置を示した。
「ここに書かれた情報と照らし合わせてみると、この遺跡はヴォルダンがかつて封印した何かがある場所の可能性が高い」
ラーンの顔色が曇り始めた。「封印されたもの?それって…危険じゃないのか?」
テルヘルは冷酷な笑みを浮かべた。「危険だからこそ価値がある。そして、ヴォルダンに復讐するには、あの封印を解き放つことが最善の手段だ」
イシェが声を上げた。「ちょっと待ってください!そんな危険なことをする前に、もっと情報が必要じゃないですか?それに…」
イシェはテルヘルの鋭い視線に圧倒されながらも、自分の言葉を続けた。「私たちには、ヴォルダンと戦う資格も力もない。あの封印を解き放つと、どうなるか分からない…。」
「資格?力?そんなものは必要ない」
テルヘルは剣を抜き、その刃を石碑に突き立てた。
「この世界を変えるのは力じゃない。情報だ。そして、私はそれを手に入れるために、どんな犠牲も払う覚悟がある」
ラーンとイシェが言葉を失う中、テルヘルはゆっくりと口を開いた。
「さあ、行くぞ。封印を解き、ヴォルダンに復讐する時が来た!」