「よし、今日はあの崩れかけた塔の奥へ入ってみるか!」ラーンが目を輝かせると、イシェはため息をついた。「また遺跡探検?ラーン、あの塔は危険だって何度も言ったでしょう。罠だらけで、何にも見つからないって噂もあるのに…」
「そんなことないよ!ほら、もしかしたら今回は大穴が見つかるかも!」ラーンの言葉に引っ張られるように、イシェは塔の入り口へと向かった。
テルヘルは二人を見下ろしながら、薄暗い塔の中へと続く階段をゆっくりと降りていった。「大穴」か…。彼女は嘲笑するような笑みを浮かべた。あの小国の遺跡なんて、目当ての物など存在しないだろう。だが、この二人が探す価値のあるものを見つけ出す可能性が、ほんの少しだけあるのだ。
ラーンの無謀な行動にイシェはいつも呆れていたが、彼の純粋な熱意には心を動かされることもあった。それに、テルヘルは彼らを利用するつもりだ。あの「至宝」を手に入れるために。
塔の中は埃っぽく、湿った臭いが漂っていた。崩れかかった壁からは、かつての栄華を偲ばせる彫刻がかすかに見えた。ラーンは興奮気味に、剣を手に、崩れた石をどかし始めた。「ほら、何かあるぞ!」彼の声はエコーのように響き渡った。
イシェは慎重に足場を確認しながら、ラーンの後ろについていく。テルヘルは二人を見つめながら、静かに呪文を唱えた。彼女の目的は「至宝」だけではない。ヴォルダンへの復讐を果たすために必要な情報もこの遺跡の中に眠っているはずなのだ。
彼らは塔の奥深くへと進んでいった。その先には、想像を絶する光景が待っていた。