「おい、イシェ、どうだ?今日はいい感じの予感がするぜ!」
ラーンの元気な声が、薄暗い遺跡の奥深くまで響き渡る。イシェは眉間にしわを寄せ、ラーンの背後から彼の装備を点検しながら言った。
「またそんなこと言ってる。いい加減にしろ、ラーン。遺跡探索は宝くじじゃないんだ。」
「わかってるって。でも、ほら、この遺跡の空気、なんか違うだろ?大穴が見つかる気がするんだよ!」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。確かに、今回の遺跡は今までとは少し様子が違った。空気が重く、静けさの中に不気味な緊張感が漂っている。だが、それは危険を意味する可能性も高い。
その時、後ろからテルヘルの声が聞こえた。「何かを発見したようだ」
テルヘルは、いつも冷静沈着な表情を崩さずに、近くの壁に手を当てている。壁には複雑な模様が刻まれており、一部が剥落している。
「これは…。」
テルヘルは目を細め、壁の模様をじっと見つめた。そしてゆっくりと口を開く。
「ヴォルダンの紋章だ」
ラーンとイシェは息をのんだ。ヴォルダンはエンノル連合にとって脅威の存在であり、その紋章を遺跡で見つけることはあまりにも不吉な意味を持つ。
「一体何が…?」
ラーンの言葉は途絶えた。壁の模様から、薄暗い光が漏れていることに気づいたからだ。その光は、まるで生き物のように脈打ちながら、ゆっくりと広がっていく。そして、その光の中に、何やらの人影が浮かび上がってきた。
人影はぼんやりとしていて、よく見えなかったが、その姿からは絶望的な雰囲気が漂っていた。まるで、この世の苦しみから逃れようと、自ら命を絶とうとしているかのようだった。
イシェは背筋が凍りつくのを感じた。あの光と影は、一体何を意味するのか。そして、なぜここにヴォルダンの紋章があるのか…。
「これは…」
テルヘルは言葉を失い、ラーンもイシェも何も言えなかった。彼らはただ、その光景を前に、恐怖と不安にさいなまれることしかできなかった。