ビレーの朝の光が、ラーンの寝顔を撫でた。いつも通り、イシェが先に起きる。「今日はあの遺跡だな」とイシェは地図を広げながら言った。「テルヘルが言ってたように、古代ヴォルダンの遺物があるらしいぞ」。ラーンはあくびをしながら「よし、大穴だ!俺たちの夢が叶うかもな!」と声を上げた。イシェは小さくため息をついた。ラーンはいつも、楽観的な言葉を並べているけれど、イシェには彼の心の奥底にある不安が感じられた。
遺跡の入り口ではテルヘルが待っていた。「今日は慎重にやれ」と彼女は冷たく言った。「ヴォルダン関連のものだ。危険な罠かもしれない」。ラーンの顔色が変わった。「おい、テルヘル、そんなこと言わずに」とイシェがフォローした。「大丈夫だって、僕たちにはラーンがいるんだろ?」。ラーンは無理やり笑顔を見せた。
遺跡内は暗く湿っていた。時折、不気味な音が響き渡る。イシェは緊張した様子で周囲を警戒する。ラーンの剣が光った。「何かいるぞ!」と彼は叫びながら、闇の中へと飛び込んだ。
しばらくして、ラーンが戻ってきた。手には小さな石の箱があった。「やった!大発見だ!」と彼は言った。しかし、イシェは彼の顔色を見つめていた。ラーンの瞳は、いつも以上に輝いていたが、その中に迷いが見え隠れしているようだった。
テルヘルは箱を慎重に開けた。中には、ヴォルダンの紋章が刻まれた小さな金貨が入っていた。「これは...」とテルヘルは呟いた。「ヴォルダン王の肖像画と一緒に埋葬されていたという伝説の金貨だ」。イシェは驚愕した。ラーンは興奮気味に「これで、俺たちは大金持ちになれるぞ!」と言った。
しかし、イシェは彼の言葉に反応しなかった。彼女はラーンの目をじっと見つめていた。その中には、金貨への欲ではなく、何か別のものが見えた気がした。それは、彼自身の存在意義を探求するような、深い闇のようなものだった。