ビレーの tavern の喧騒が遠ざかり、ラーンはイシェの眉間に浮かぶ皺を見つめた。「またあの顔か？」と彼は陽気に声をかけると、イシェはため息をつきながら酒を一口飲んだ。
「テルヘルに頼りすぎるのは良くないって、何度も言ってるじゃないか」
「でもさ、あの人の言う通りだぜ。あの遺跡の奥にある遺物には、ビレーを救えるほどの価値があるかもしれんぞ！臣民たちの暮らしが楽になる未来が見えれば、俺たちはもっと冒険できるんだ！」
ラーンの瞳は熱く輝いていた。イシェは彼の熱意に心を痛めた。ラーンはいつも真っ直ぐで、誰かを助けるために奔走する彼の姿は、多くの人々に希望を与える。しかし、その純粋さは時に残酷な現実を無視してしまう。特に今回は、ヴォルダンとの国境紛争が激化し、ビレーの住民たちは不安と恐怖に怯えていた。
テルヘルは、そんな状況を巧みに利用しているようにイシェには見えた。彼女は、遺跡の調査費用を肩代わりし、住民たちの生活支援を約束する代わりに、遺跡で見つかる遺物全てを独占しようと画策していたのだ。
「ビレーを救いたい気持ちはわかる」とイシェは言った。「でも、テルヘルの真意を見極めないと、我々も臣民たちも、結局は利用されるだけだぞ」
ラーンの表情が曇った。「そんな…」
その時、 tavern の扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線は、ラーンとイシェに向けられた。
「準備は良いか？」と彼女は冷たく尋ねた。「遺跡の奥深くには、我々が望むものが眠っている」