ラーンの巨大なハンマーが石壁を粉砕した。埃が立ち込める中、イシェが小さくため息をついた。
「また無駄な力仕事か…」
「黙ってろ!ほら、何か見えるか?」
ラーンは興奮気味に瓦礫の山を掻き分ける。イシェは彼とは対照的に冷静に周囲を見渡した。彼らの雇い主であるテルヘルが指定した遺跡は、いつも以上に荒廃しており、危険な空気が漂っていた。
「ここには何もないだろう」
イシェはそう呟くと、テルヘルの指示に従い、遺跡の奥へと進んでいった。ラーンは後を追うように、ハンマーを肩に担いで進む。
広間の壁には、幾何学模様が複雑に刻まれていた。イシェは手を伸ばし、模様に触れた瞬間、体がわずかに震えた。
「何だこれは…」
その時、床から赤い光が溢れ出し始めた。光は急速に膨張し、広間を満たしていく。ラーンとイシェは目を細めて光を見つめた。
「テルヘル!何かあったぞ!」
ラーンの叫び声と共に、光はさらに激しく輝き、広間の空間を歪ませた。そして、その中心から巨大な影が現れた。それは、古代の邪神を彷彿とさせる、不気味で禍々しい姿だった。
「これは…!」
イシェの声が震えた。テルヘルは冷静に剣を抜いた。
「遺跡の守りか…」
彼女はそう呟きながら、邪神へと立ち向かう。ラーンもまた、ハンマーを握りしめ、戦意を燃やした。しかし、その圧倒的な存在感の前には、彼らにできることは何もなかった。
膨張する光の中で、三人は絶望の淵へ突き落とされていく。