ビレーの酒場「荒れ果てた竜」の薄暗い店内で、ラーンは粗末なテーブルに肘をつき、くすんだ目を細めていた。イシェが目の前に置いた地図を指差しながら、「あの遺跡は危険だって聞いたことがあるよ。俺たちは一体何を探しに行くんだ?」と尋ねると、ラーンは苦笑いした。「おいおい、イシェ。大穴には危険がつきものだぞ。それに、今回はテルヘルが依頼人だ。あの娘の言うことは聞かないわけにいかないだろう?」
イシェは眉間に皺を寄せた。「テルヘルの言うことだけ聞くのはどうかと思うんだ。一体何のために遺跡を探るのか、目的が分からなければ不安だよ」と呟く。ラーンの視線は遠く、まるで過去の何かを見つめるように空虚になった。「大穴…俺もいつかあの伝説の財宝を手に入れるんだ。それでビレーから出て、広い世界を見てみたい」
イシェはラーンの言葉を静かに聞いた後、ため息をついた。「お前には夢があるな。俺は…まだ何も分からない」と呟いた。その時、店のドアが開き、テルヘルが凛とした表情で入ってきた。彼女の鋭い視線は二人に止まり、テーブルに地図を広げると、「準備はいいか?」と問いかけた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。
遺跡への道は険しく、深い森に囲まれた洞窟だった。空気が重く、不気味な静寂が支配していた。ラーンの足取りは軽快だが、イシェは緊張で顔が引きつっていた。テルヘルは先頭を歩き、時折振り返りながら鋭い視線を送る。「何か見つけたか?」と尋ねると、イシェは首を横に振った。「まだ何も…」その言葉を遮るかのように、洞窟の奥から不気味な音が響き渡った。それはまるで、膨らみ続ける何かが、ゆっくりと近づいてくる音だった。
ラーンの表情が曇り、剣を握り締めた。イシェは背筋を凍りつかせる恐怖を感じながらも、冷静に周囲を見回した。テルヘルは眉間に皺を寄せ、低い声で言った。「準備しろ」と。三人は互いに顔を見合わせ、緊張感だけが場を満たしていく。膨らむ音は徐々に大きくなり、ついに洞窟の入り口から何かが姿を現す。それは…