ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェに鋭い視線を向けられた。「またか、ラーン。せめて少しは慎重に。」イシェはそう言うと、足元に落ちている小さな水晶のかけらを拾い上げた。
「何だ、このチープな trinket は？」ラーンの顔は不機嫌だった。「こんなもん掘り返すために危険な遺跡に潜らなきゃいけないなんて、全く時間の無駄だ」
テルヘルが両手を組み、冷静な声で言った。「落ち着きなさい、ラーン。この水晶のかけらはただの飾り物じゃない。古代の魔法道具の一部かもしれない。分析すれば貴重な情報を得られる可能性がある。」
彼女は膝をついて、水晶のかけらを丁寧に観察した。その輝きは薄っすらと青白く、まるで月の光に透かされているようだった。「この模様…どこかで見たことがあるような…」テルヘルは眉間に皺を寄せた。「もしかしたら…」
その時、背後から激しい音が響き渡った。石壁が崩れ始め、埃っぽい空気が充満した。
「なんだこれは！」ラーンは剣を抜いて周囲を見回したが、敵の姿は見えない。「何かいるぞ！気配を感じる」
イシェは緊張した様子で、テルヘルに声をかけた。「テルヘル、何か分かる？」
テルヘルは水晶のかけらを握りしめ、目を細めた。「この遺跡…何かを呼び覚ましてしまったようだ…」彼女はゆっくりと立ち上がり、ラーンの目の前に立った。「逃げろ！すぐにビレーに戻るんだ！」
「そんな…」ラーンは抵抗したが、イシェが彼の腕を引きずった。
「ラーン、落ち着きなさい！テルヘルが言っている通りだ。ここはもう安全じゃない！」
三人は崩れ落ちる遺跡を走り抜けた。背後から轟く音と、何かが這い寄るような気配を感じながら、彼らは必死に逃げ続けた。イシェは足がつらくなりそうになりながらも、ラーンの後ろを走った。彼女の腿が痛むのを意識しながらも、彼女は諦めない。
「早く！ビレーまであと少しだ！」テルヘルの声が響き渡る。
そして、三人はようやく遺跡の入り口にたどり着いた。振り返ると、崩れ落ちる遺跡から巨大な影が姿を現した。それは、古代の魔法によって蘇った恐ろしい怪物だった。