ラーンの粗雑な剣 swing が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへ響いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れそうな石畳の上を慎重に歩いていた。
「おい、イシェ!早くしろよ!」
ラーンが振り返り、不機嫌そうに言った。だがイシェは彼の手振り一つで動かない。
「ここは危険だ。罠があるかもしれない」
イシェの視線は、壁に刻まれた奇妙なシンボルに固定されていた。「あのシンボル、どこかで見たことがある… 」
「どうでもいい!早く財宝を見つけて、ビレーの酒場で一杯やるんだ!」
ラーンの言葉がイシェの耳に刺さった。ビレーの酒場。ラーンにとってそれは夢と現実の境界線だった。いつも酔っぱらって大 talk を振る舞い、未来を語り合う場所。だがイシェにはそこでの時間は虚しく感じられた。
「テルヘルはどうするんだ?」
イシェは呟いた。テルヘルは影のように彼らの後ろをついてきていたが、目的はあくまで遺跡の奥深くにある遺物だ。彼女の冷酷な目つきから、イシェは何かを感じ取っていた。
その時、地面が激しく揺れた。ラーンはよろめき、イシェはバランスを失って壁にぶつかった。壁面から崩れ落ちた石ころがテルヘルの足元を直撃した。彼女は一瞬の躊躇もなく、剣を抜いた。
「何だこれは…」
テルヘルは目を丸くして、崩れた壁の中に何かを見つけた。それは奇妙な形の金属製の箱だった。箱には複雑な模様が刻まれており、その中心には赤い宝石が嵌められていた。
ラーンとイシェは息を呑んだ。これは、噂の「大穴」の一部なのか?
テルヘルは宝石をじっと見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「この宝石…私の復讐に必要だ…」
その言葉は、まるで呪いのようだった。イシェは、テルヘルの目の中に燃える憎しみの炎を見た。そして同時に、ラーンの無邪気な笑顔の裏に隠された何かを感じ取った。
二人は腹違いの兄弟だった。それは、誰も知らない秘密だった。