「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると奥に秘宝が眠っているらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら、地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「またそんな曖昧な情報か？ 遺跡探検で食うには不安定すぎるだろう」と冷静に反論した。
「イシェ、お前はいつも心配性だな。大丈夫、今回は違う！ 実は…」ラーンの口から続いた言葉は、テルヘルからの依頼だった。彼女はヴォルダンとの戦いに役立つ情報があると聞きつけ、古代遺跡の調査を依頼してきたのだ。報酬はいつもの倍。イシェは渋い顔をしたが、ラーンの熱意に押され、やむなく同意した。
崩れかけた塔の入り口で、テルヘルはラーンたちに鋭い視線を向けた。「今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンに追っ手がいる可能性がある」と彼女は冷たく告げた。その言葉にラーンは軽く笑いかけたが、イシェは背筋をゾッとするのを感じた。
塔内は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元の石畳は崩れかけており、一歩一歩慎重に進まなければならなかった。ラーンの軽率な行動にイシェは何度も注意したが、彼は聞き耳を持たない。
「ほら、何か見つけたぞ！」ラーンの声が響き渡った。彼は壁の奥深くに隠された小さな部屋を発見したようだ。中に入ると、そこには金貨が山積みになっていた。
「やったー！これで大金持ちだ！」ラーンは興奮して喜んだ。イシェも思わず息をのんだ。しかし、その時、背後から不気味な音が聞こえてきた。
振り返ると、そこには黒ずくめの男たちが立っていた。ヴォルダンの兵士たちだ。テルヘルは冷静に剣を抜いた。「お前たちは一体何者だ？」と問いかけた。
「お前が探しているものは我々が手に入れる」と男の一人が答えた。激しい戦いが始まった。ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い、敵を迎え撃った。だが、敵は数が多く、次第に追い詰められていく。
その時、イシェは一つの閃きを得た。「あの金貨の山だ！ それを利用すれば敵を混乱させられるかもしれない」彼はラーンに声をかけた。「一緒にやろう！」
二人は協力して金貨の山を敵へと投げつけた。金貨が敵の視界を遮り、彼らは一瞬怯んだ。その隙にテルヘルは敵の一人を倒し、残りの者たちも逃走した。
戦いが終わった後、イシェはラーンに言った。「あの時、お前が冷静さを保っていなかったら、我々は終わりだったぞ」ラーンは照れくさそうに笑った。「そうだな、今回はイシェのおかげだ」
テルヘルは微笑みを浮かべた。「今回の件でヴォルダンとの戦いに必要な情報を得ることができた。お前たちには感謝する」彼女はそう言うと、ラーンとイシェに深く頭を下げた。
その後、三人はビレーへと戻った。彼らは疲弊していたが、同時に大きな達成感を感じていた。イシェは、この経験を通して、自分自身が変わっていくのを感じた。そして、彼はラーンと共に、いつか「大穴」を掘り当てる夢に再び希望を抱き始めた。
だが、彼らの周りでは、ヴォルダンとの戦いが本格化しつつあった。そして、テルヘルが抱える秘密もまた、やがて明らかになる運命にあった。