ラーンが腰掛けていたのは、いつもと同じようにビレーの入り口近くの酒場でだった。イシェが注文した安い酒を一口飲み干すと、ラーンの顔は曇った。「また遺跡探検かよ。」イシェの言葉に、ラーンは小さく頷いた。
「あのテルヘルに頼るしかないんだろ。大穴を掘り当てて、ビレーから出てやるってんだ。お前も一緒に、新しい世界を見てみたいだろ？」ラーンはそう言うと、テーブルの上に置かれた腰掛けの布に肘をつき、熱く語った。イシェは静かに彼の言葉を聞いた。
「新しい世界か…」イシェは呟いた。彼女はラーンの言葉に心を揺さぶられるものがあった。しかし、同時に不安も募る。テルヘルとの契約は確かに大きな報酬を約束するが、その代償はあまりにも大きいように思えた。彼女の目は、かすかに揺らぐ炎のように燃えていた。
「よし、わかったよ。」イシェは小さく頷き、ラーンの肩を軽く叩いた。「新しい世界を見に行くんだ。」ラーンは立ち上がり、イシェの手を引っ張った。「さあ行こう！」彼は興奮を抑えきれない様子で、酒場から飛び出した。イシェは彼の後ろ姿を見ながら、深くため息をついた。腰掛けの布に深く刻まれた皺のように、彼女の心にも深い影が落とされた。