「おいイシェ、あの石碑はどうだ?何か刻まれてるぞ!」ラーンが興奮気味に叫びながら、埃をかぶった石碑を指差した。イシェは眉間にしわを寄せ、慎重に石碑の表面を撫でた。「何かの記号みたいだな…でもよくわからない」
「よし、この石碑を調べたら今日の探索は終わりだ!」ラーンは満足げに言ったが、イシェは彼の後ろ姿を見ながらため息をついた。最近、ラーンの行動がより無計画になってきたように思う。以前なら遺跡の構造や歴史について熱く語っていたのに、今はただ財宝を求めるばかりだ。
「よし、帰ろうか」イシェはそう告げると、ラーンに肩を叩いて立ち上がった。「今日はもう日が暮れそうだぞ」テルヘルが冷静に言った。彼女はいつも冷静沈着で、二人の無茶な行動を影ながら牽制してくれる存在だった。だが、最近彼女の表情にもどこか疲れているような影が見られる気がした。
ビレーに戻ると、町の広場にはいつものように人々が集まっていた。酒場では騒々しい笑い声や喧嘩の声が聞こえ、子供たちの走り回る姿もあった。しかし、イシェはいつもより賑やかさが不快に感じた。まるで、表面だけ華やかに彩られ、裏では腐敗したものが蠢いているような感覚だった。
「今日の収穫はどうだ?」酒場で一杯やりながら、テルヘルが尋ねた。「特に何も見つからなかった」ラーンが肩を落とした。「また明日頑張ろうぜ!」イシェは軽く笑いかけたが、彼の心には不安がよぎった。最近、遺跡で見つかる遺物はどれも質素なものばかりで、以前のような貴重な品はほとんど見つからない。
「何かおかしいんじゃないか?」イシェはテルヘルに密かに相談した。「この街、そしてこの国全体が腐りつつあるような気がするんだ」テルヘルは静かに頷きながら、酒を一口飲んだ。「私もそう感じている。ヴォルダンとの関係悪化に加えて、国内の政治も腐敗が進んでいる。私たちが探しているものは、単なる財宝ではないのかもしれない…」
イシェはテルヘルの言葉に深く考え込んだ。彼らの目的は何だったのか?大穴を見つけること?それとも、この腐りゆく世界を打破するための何かを見つけることなのか?イシェは答えが見つからないまま、次の遺跡探しの準備を始めた。