「よし、今回はあの崩れた塔だ」ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せて地図を睨んだ。「また危険な場所かい？ ラーン、あの塔は噂では…」
「大丈夫！俺が先頭を切って開拓する！」ラーンの言葉は熱かったが、イシェにはどこか不安が残った。
ビレーの遺跡探索はいつも同じだった。ラーンが夢を見るように遺跡に飛び込み、イシェが冷静に状況を判断し、テルヘルが影から情報を集める。今回は少し違った。テルヘルの依頼内容が異なっていたのだ。
「あの塔にはヴォルダンが何か隠しているらしい。脳髄のようなもの…それが手に入ればヴォルダンの弱点が分かるかもしれない」
テルヘルはそう告げると、ラーンに鋭い視線を向けた。「お前ならあの塔の奥深くにたどり着けるだろう」
ラーンの脳裏には、巨大な宝の山と、それにまつわる壮大な冒険が描かれた。イシェはラーンの興奮を理解しつつも、テルヘルの目的には何か秘密があると感じていた。
崩れた塔の入り口は狭く、埃っぽい空気が漂っていた。ラーンが先頭を切って進もうとするが、イシェが彼を制止した。「待て。何か変だ」
イシェは足元にある石畳に目をやると、不自然な模様を発見した。それは複雑に絡み合った線であり、どこかで見たことがあるような気がした。
「これは…」イシェは自分の脳裏に浮かんだ記憶を必死に探り当てようとした。かつて祖母から聞いた話だ。ある古代文明の遺跡には、脳髄とつながる力を持つ石畳があるという話だった。
その時、塔の中から不気味な音が響き渡った。ラーンが慌てて剣を抜くと、影のようなものが彼に向かって襲いかかってきた。イシェは咄嗟にラーンの前に飛び出し、彼の腕を掴んで引きずり戻した。
「これは罠だ！」
イシェの声が響き渡る中、ラーンの脳裏には一つのことが浮かんだ。あの石畳の模様、そしてテルヘルの目的…。
「脳髄…彼女は本当にヴォルダンと戦いたいのか？」