ラーンが大きな声で笑った。「おい、イシェ！見てみろよ、この宝剣！」錆びついた剣を振りかざすラーンの顔は興奮で輝いていた。イシェは眉間にしわを寄せながら剣を眺めた。「またそんなもの見つけた？ ラーン、あの遺跡は危険だって言っただろう。それに、一体何に使うんだ？」ラーンは剣を肩越しに担ぎ、イシェの目をじっと見た。「お前にはわからないよな！いつかこの剣でヴォルダンを倒すんだ！」 イシェはため息をついた。いつも通り、ラーンの空想話が始まったようだ。
テルヘルは遺跡の入り口前で腕を組んで待っていた。彼女はラーンの熱狂に冷淡な視線を向けていた。「時間だ。無駄な時間を過ごしている場合じゃない。」ラーンの興奮を鎮めようと努めるイシェの声がかすかに聞こえた。「でも、テルヘル、あの剣…もしかしたら…」
「いい加減にしろ。」テルヘルの声は氷のように冷たかった。「遺跡の奥深くには、我々が求めるものがある。それを忘れずに。」ラーンは渋々剣を納め、テルヘルに従って遺跡へと足を踏み入れた。イシェは二人が進む後を静かに見つめた。いつもながら、ラーンの行動は予測不可能で、イシェ自身もいつ脱落してしまうのか不安だった。
遺跡の内部は薄暗く湿っていた。壁には奇妙な文字が刻まれており、不気味な空気が漂っていた。ラーンはまるで冒険小説の主人公のような表情で、周囲をくまなく探していた。イシェは彼の無謀さにため息をつきながら、足元を注意深く見ていた。
テルヘルは突然立ち止まった。「ここだ。」彼女は壁に手を当てると、奇妙な装置を操作し始めた。壁の一部が回転し、奥へと続く通路が現れた。「さあ、中に入ろう。」テルヘルは先導するように歩き始めた。ラーンは興味津々にテルヘルの後をついていった。イシェは振り返り、再びあの剣の光沢を思い浮かべた。
「もしや…」イシェは小さな声で呟いた。「もしかしたら、本当に大穴が見つかるのかな？」しかし、彼女の心には不安が渦巻いていた。この遺跡、そしてこの冒険から脱落する日はいつ来るのだろうか？