ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝日に溶け込んでいく。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、彼の荷造りに目をやっていた。「また大穴の話か? そんな夢物語に時間を浪費する前に、今日の仕事の本番に向かうべきだ。」イシェの言葉はいつも通り、ラーンの耳に届かず風に乗ってどこかへ飛んでいった。
「ほらイシェ、今回は違うぞ! きっと今回は、あの伝説の王冠が眠る遺跡だって!」 ラーンは目を輝かせ、イシェの制止を振り払うようにして、剣とつるはしを背負い始めた。「テルヘルさんが言うんだから間違いないだろう。あの大富豪が、俺たちを雇う理由も分かるぞ!」
イシェはため息をついた。テルヘルの依頼は確かに高額だった。だがその金額に見合うだけの成果をあげられる保証はどこにもない。ましてや、ヴォルダンへの復讐という彼女の目的と絡んでくるとなると、その危険度はさらに増す。イシェはラーンの楽観的な態度に、いつも不安を感じていた。
遺跡の入り口にはテルヘルが立っていた。黒曜石のような瞳は冷たく、鋭い眼光で二人を見下ろす。「今日は重要な日だ。慎重に、そして速く動け。」彼女の言葉は氷のように冷たいが、同時にラーンを燃え上がらせるような力を持っていた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が鼻腔を刺激する。イシェは足元を注意深く見て歩き、ラーンの後ろから彼を牽制するように進む。ラーンの興奮を抑えるには、いつも以上に神経を集中させなければならなかった。
遺跡の奥深くまで進むにつれ、壁には奇妙な模様が刻まれていた。イシェはそれらを分析しようとしたが、その意味は解読できなかった。「これは一体…?」
「何だ、イシェ? 心配性だな。」ラーンは振り返り、イシェの肩を叩いた。その時、壁から不気味な光が放たれ、彼らの周りに奇妙なエネルギーが渦巻いた。
「これは…」 イシェは言葉を失った。その瞬間、ラーンの剣が光り輝き始めた。彼の目は燃えるように赤く変色し、獣のような咆哮を上げながら周囲を攻撃し始めた。イシェは驚愕のあまり硬直した。
「ラーン! お前は一体…!」 イシェの叫びは風に乗って消えていった。