ラーンの大斧が遺跡の奥深くへ轟き渡った。埃が舞う中、イシェが眉間に皺を寄せた。「また無駄な抵抗だ。あの石像は動かないぞ」。
「うるせぇな、イシェ!こんな頑固な奴が宝を守るってのは筋が悪いだろ!」ラーンは不機嫌そうに斧を振り下ろした。だが、石像は微動だにしなかった。
テルヘルは冷静に状況を見極めていた。「この遺跡はヴォルダン軍の調査記録にも出ていない。未知の罠がある可能性もある。無闇な攻撃は控えるべきだ」。
「そんなこと言ってると宝が先取られちまうぞ!」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。「テルヘル、あの石像の足元にある模様、何か変じゃないか?」
テルヘルが近づいて確認すると、確かに奇妙な刻印があった。それはヴォルダン軍の紋章と酷似している。
「これは...ヴォルダンが何かを隠した可能性がある」テルヘルの視線が鋭く光る。「この遺跡はヴォルダンにとって重要な場所だったのかもしれない」。
ラーンは不機嫌そうに言った。「何を企んでるんだ、この婆さんは…」
「黙れ、ラーン」イシェが制止する。「テルヘルさんの言う通りだ。もしかしたら、ここにはヴォルダンが持つ何らかの秘密が眠っているかもしれない」。
テルヘルはゆっくりと石像の刻印に手を伸ばした。「もしこれがヴォルダンに関する情報なら...私の復讐に大きく役立つだろう」。
その時、石像の目に赤い光が宿った。そして、低い唸り声が遺跡中に響き渡った。壁から鋭い棘が生え、ラーンを包み込むように迫ってきた。
「なっ...?」ラーンの顔色が青ざめた。「おい、イシェ!テルヘル!助けてくれ!」
イシェは慌てて剣を抜いたが、すでに遅かった。棘はラーンを貫き、彼の叫び声を押し殺した。
テルヘルは冷静に状況を分析し、イシェに言った。「これはヴォルダンが仕掛けた罠だ。この遺跡から出るには、石像の謎を解くしかない」。
イシェは恐怖で震えていた。「でも...ラーンが...!」
「ラーンの命を無駄にするな」テルヘルは冷酷な表情を見せた。「彼の死は、我々の勝利のために必要な犠牲だ。さあ、イシェ。一緒にこの遺跡の真実を見つけ出し、ヴォルダンへの復讐を果たそう」。
イシェは涙を抑えながら頷いた。ラーンの死を無駄にしないためにも、そして自分たちの未来を守るために、イシェはテルヘルと共に石像の謎に挑む決意をした。