ラーンが巨大な石門を勢いよく押し開けると、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェは咳き込みながら鼻をつまみ、「またしても、こんな薄暗い場所か…」と呟いた。ラーンの笑顔は、いつもと変わらず眩しかった。「さあイシェ、今回はきっと大穴が見つかるぞ!ほら、あの奥に何か光が…!」
イシェはラーンの背後から、彼を制止するように手を伸ばした。「待て、ラーン。落ち着いて。まずは周囲を確認しよう。」だがラーンの耳には届かなかった。彼はすでに、石畳の上を駆け出していた。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後を追いかけた。
テルヘルは静かに、石壁に沿って進んでいった。彼女の目は鋭く、周囲の全てを見逃さなかった。彼女は何かを感じたのか、突然立ち止まり、振り返った。「ここには何かがいる。」と低く呟いた。ラーンが慌てて戻ってきた。「何がいるんだ?」
テルヘルは答えず、剣を構えた。イシェも緊張を隠せない。その時、石壁から何者かが現れた。それは巨大な虫のような姿で、鋭い牙を剥き出しにしていた。ラーンの顔色が変わった。「しまった、これは大穴じゃない…逃げるぞ!」
イシェはラーンを制止した。「逃げたら終わりよ!落ち着いて戦え!」彼女は素早く剣を抜くと、虫の攻撃をかわしながら反撃に出た。テルヘルもまた、冷静に敵の動きを分析しながら戦い始めた。ラーンの脳裏には、イシェの言葉がこだました。「落ち着いて…」
彼は深呼吸をし、剣を握り直した。その時、彼の胸中に、今まで感じたことのない感情が湧き上がってきた。それは、イシェへの感謝と、彼女を守るという強い決意だった。ラーンは、かつてない勇気で虫に立ち向かった。