ビレーの朝はひっそりと始まった。ラーンが小屋の戸を開けると、薄暗い空から冷えた風が吹き込んできた。イシェはすでに起きていて、小さな火を起こし、湯を沸かしている。「今日はどこに行くんだい？」ラーンの問いかけに、イシェは地図を広げながら答えた。「少し南にある遺跡だ。テルヘルが情報を持ってきたんだ。」
テルヘルはいつも通り、高級な茶葉を淹れており、その優雅な仕草から想像もつかないほどの冷酷な過去を秘めていた。彼女はヴォルダンへの復讐のため、ラーンとイシェを利用しているのだ。しかし、彼らにはその真実を知る由もない。
遺跡の入り口は崩れかかっており、危険を察してラーンが足を踏み出そうとした時、イシェが制止した。「待て、何か変だ。」イシェは地面に目を凝らした。「ここには、以前来たことがないような気がする。」ラーンの顔色が変わった。「まさか…？」
遺跡内部は薄暗く、不気味な静けさが支配していた。彼らは慎重に足を進めた。すると、突然、床が崩れ始め、ラーンが深淵へ転落しそうになる。イシェが必死に彼の手を掴み止め、「大丈夫か！」と叫んだ。ラーンの顔は蒼白になっていた。「あの時、何かを感じたんだ…まるで、この遺跡が…生きているような…。」
テルヘルは冷静に状況を分析した。「ここは危険だ。撤退しよう。」しかし、その時、遺跡の奥から、轟音が響き渡った。それはまるで、大地が胎動するような音だった。ラーンの瞳が燃え上がる。「これは…大穴かもしれない…」イシェは恐怖を感じながらも、ラーンの背中に手を置き、力強く言った。「行こう！ラーン！」
三人は、未知なる遺跡の奥深くへと進んでいった。その先に待ち受けるものとは、誰も知る由もなかった。