ラーンの粗雑な斧 swing が埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥へと深く響いた。イシェは眉間に皺を寄せ、背筋を伸ばしながら周囲を警戒した。いつもならラーンが興奮気味に大声を上げて遺跡の構造について語っているはずだが、今日は異様に静かだった。「何かあったのか?」イシェの声は小さく、埃っぽい空気に吸い込まれそうになった。ラーンの視線が、奥へと続く崩れかけた通路に向けられていた。「なんか...変だな」と彼は呟いた。いつもなら率先して先へ進む彼の後ろ姿が、今日はどこか不安定に見えた。
テルヘルは背筋を伸ばし、鋭い視線で周囲をくまなく見渡した。ヴォルダンからの復讐のためには、この遺跡の奥深くに眠るという伝説の遺物が必要だ。彼女はラーンの無計画さにイラつきながらも、彼の持つ直感的な力には期待をかけていた。しかし、今日の彼はいつもとは違う。何かを察知しているのか、それとも...
イシェはラーンの背中に手を当てた。「大丈夫?」と尋ねると、ラーンは小さく頷きながら振り返った。彼の目は、今まで見たことのないような深い影で覆われていた。「行くぞ」と彼は言った。その声にはいつもの軽快さはなく、何かを押し殺したような重い響きがあった。イシェは背筋がゾッとするのを感じた。
三人はゆっくりと崩れかけた通路を進んでいった。足元には、何者かが踏み入れた痕跡があり、その先には、今まで見たことのないような漆黒の闇が広がっていた。