ラーンの豪快な笑い声がビレーの遺跡街の喧騒に溶け込んでいた。イシェは眉間に皺を寄せて、彼の背後から深呼吸をした。
「また大穴の話か。ラーン、いつになったら現実を見るんだ?」
「いや、今回は違うって!あの地図、本当に珍しい遺物がある場所を示してる気がするんだ!」
ラーンの瞳は輝いており、イシェの冷静な分析を打ち消すほどの確信に満ちていた。イシェはため息をつきながらも、彼の興奮に巻き込まれそうになる自分がいることを自覚した。
「わかった、わかった。今回は君の言う通りにしてみよう。」
イシェはラーンの熱意を少しだけ受け入れることにした。しかし、心のどこかで冷静な判断を諦めることはなかった。彼らの前に広がる遺跡は、いつも以上に危険を感じさせた。
テルヘルはいつものように影のある場所に立っていた。鋭い視線で二人のやり取りを見つめ、薄く唇を動かす。彼女にはラーンとイシェの行動に隠された意図が見えた。特にイシェは、いつも以上に慎重な様子を見せ、何かを隠しているようだった。
「この遺跡探索は、単なる大穴探しではない」
テルヘルはそう呟いた。彼女の目は、背伸びをしている二人の姿を見据えていた。彼らの夢と野心、そして彼女自身の復讐心を繋ぐ糸は、この遺跡の奥深くに深く根付いていた。