ラーンが巨大な石の扉を押し開けたとき、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェは咳き込みながら鼻をつまみ、「またこんな薄暗い場所か…」と呟いた。ラーンの背中はいつもより大きく見えた。
「よし、イシェ！今回は大穴だ！」
ラーンは興奮気味に剣を構え、奥へと進んでいく。イシェはため息をつきながら、テルヘルの方を見る。テルヘルは静かに壁の模様を眺めており、彼女の表情からは読み取ることができなかった。「何かわかったのか？」とイシェが尋ねると、テルヘルはゆっくりと頷いた。
「この遺跡、ヴォルダンと関わりがある可能性が高い。ここはかつてヴォルダンの兵士たちが略奪していた場所だと記録に残っている」
イシェは少し緊張した。「つまり、危険な罠が仕掛けられているかもしれないってことか…」
彼らは慎重に奥へ進む。通路は狭く、天井からは石が崩れ落ちそうなくらい不安定だった。ラーンはまるで楽しんでいるかのように進んでいくが、イシェは常に周囲を警戒しながら歩いていた。
「ここには何かがあるはずだ」
テルヘルが言った。彼女は壁に手を当てると、何かを感じ取っているようだった。その時、床から冷たい風が吹き上がり、石畳の隙間から白い粉が噴き出した。イシェは咄嗟に息を止めた。粉塵が肺を刺激しそうな勢いで迫ってくる。ラーンは慌てて coughing cough
coughing cough
「なんだこれは！」と叫んだが、その声もすぐに粉塵に呑み込まれてしまった。テルヘルは冷静に状況を判断し、「これは毒だ！すぐにここから離れろ！」と叫んだ。三人は必死に後退したが、すでに遅かった。粉塵は瞬く間に広がり、視界を遮り始めた。イシェは息苦しさで胸が締め付けられるのを感じた。彼女は必死に呼吸しようと試みるが、肺に毒が入り込み、空気が吸えなくなっていく感覚だった。
「ラーン！イシェ！」テルヘルの声が遠く聞こえた。イシェは意識が遠のいていくのを感じながら、最後の力を振り絞って手を伸ばした。