ラーンの大声がビレーの朝の静けさを切り裂いた。「ついに来たぞ！今回は大穴だ！」
イシェはため息をつきながら、寝ぼけた目をこすった。「またか…」
テルヘルは冷静に地図を広げ、指を走らせた。「遺跡の位置は確認済み。だが、周囲にはヴォルダンの哨戒が確認されている。注意が必要だ。」
ラーンは意気揚々と剣を抜いた。「そんなの怖くない！俺様を止められる奴はいない！」
イシェは「いつも通り、落ち着いて行動しようよ…」と呟きながら、彼についていく。
遺跡の入り口には、朽ちた石造りの門が聳え立っていた。ラーンが力任せに門を開けると、内部は薄暗い迷宮が広がっていた。
「よし！宝の在処を探し出すぞ！」
ラーンの足取りは軽快だが、イシェは慎重に足場を確認しながら進む。テルヘルは後ろから二人を鋭い目で観察している。
遺跡の中は複雑な構造で、様々な部屋や通路が迷路のように続いていた。壁には古代の文字が刻まれており、ラーンは興味津々に触れようとするが、イシェは「触るな！罠かもしれない」と制止する。
数時間かけて探索を進め、ようやく奥深くに巨大な石棺を発見した。「ここだ！」ラーンの声が響き渡る。
興奮を抑えきれずに石棺に手を伸ばすラーン。しかし、その時、石棺の表面が突然輝き、部屋全体を赤く染めた光が放たれる。
「何だ！？これは…！」ラーンの顔色が変わる。イシェは直感的に危険を感じ、後ずさる。テルヘルは冷静に状況を分析する。
すると石棺の上部が開き、そこから黒い煙が立ち上る。煙が収まると、そこには一際大きな宝石が輝いていた。
「やった！ついに大穴だ！」ラーンは喜びの声を上げる。
しかし、イシェとテルヘルは目を丸くした。「これは…」。宝石には邪悪な気が宿っているように感じた。
ラーンの手は宝石に届こうとしていた。その時、地面が激しく揺れ始めた。
「逃げろ！」テルヘルの叫び声が響き渡る。遺跡全体が崩壊し始める。
彼らは必死に遺跡から脱出するが、ラーンは宝石を諦めきれず、振り返って手招きする。
イシェがラーンの手を引っ張る。「もう逃げよう！危険だ！」
ラーンは迷いながらも、イシェの言葉に従い、遺跡から逃げることにした。
崩壊していく遺跡を見つめるラーンの顔には、宝石への執念と同時に、深い後悔の色が浮かんでいた。