ビレーの夕暮れ時、ラーンとイシェは疲れ切った顔で酒場で一杯飲んでいた。今日は遺跡探索で収穫がなく、ラーンの豪語が空しく終わった。
「おい、イシェ。明日の朝もあの遺跡行くぞ!」
ラーンの元気な声に、イシェはため息をついた。「またかよ、ラーン。もういい加減諦めろよ。あそこには何もないって、お前もわかってるだろ?」
ラーンはイシェの言葉を無視して酒をグイッと飲み干した。「いや、絶対あるんだ!あの遺跡は何かがおかしいんだ。俺には感じるんだ!」
イシェはラーンの熱意に苦笑するしかない。彼にとって、遺跡探索は単なる日暮らしの手段だ。だが、ラーンにとっては違う。彼は夢を追いかけているのだ。
その時、店のドアが開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い眼光が店内を包み込み、一瞬にして静寂が訪れた。ラーンの目には、いつもより強い光が宿っていた。
「何か見つけたか?」ラーンの声が震えていた。テルヘルは小さく頷き、テーブルに地図を広げた。そこには、ビレーから南へ続く山脈の地図が描かれていた。そして、その中心部に、巨大な赤いマークがつけられていた。
「これは…」イシェは息を呑んだ。「あの遺跡…よりもずっと大きい遺跡だと?」
テルヘルは頷き、冷酷な笑みを浮かべた。「この遺跡には、ヴォルダンに奪われたものを取り戻すための鍵がある。そして、それはお前たちが手に入れるものだ。」
ラーンの目は輝きを増し、イシェの顔にも緊張感が走った。巨大な遺跡、失われたもの、ヴォルダンへの復讐…彼らの運命は、その肥大で未知なる世界に飲み込まれようとしていた。