ラーンの大斧が岩盤を砕き、埃が立ち上る。
「よし、ここだな!」
彼は興奮気味に言ったが、イシェは眉間に皺を寄せた。
「また行き当たりばったりか? ラーン、あの警告文を思い出せ。ここは聖域だと言うではないか。むやみに手を出すべきではない。」
「そんなこと言ってると宝探しが終わっちまうぞ! 何より、テルヘルが待ってるんだろ?」
ラーンの視線は、後ろから続くテルヘルの姿に向かった。彼女は薄暗い洞窟の奥底を鋭い目で見ている。その目は、まるで何かを見透かしているかのようだ。
「確かに、テルヘルには約束がある」とイシェは言った。「だが、聖域に潜む危険も忘れてはいけない。ここは聖霊が宿ると伝えられている場所だぞ。」
ラーンの顔色が変わった。彼は聖霊の話をどこかで聞いたことがあるような気がした。しかし、その記憶は漠然としていて、彼の心に恐怖を植え付けるには至らなかった。
「聖霊?そんなものに脅かされるわけないだろう!俺たちは遺跡探検者だ!宝を手に入れるために命をかけるんだ!」
ラーンはそう言うと、再び斧を振り上げた。イシェはため息をつきながら、彼の後を追った。テルヘルは静かに微笑みを浮かべている。
「聖霊か…興味深い。」彼女は呟いた。
洞窟の奥深くには、漆黒の闇が広がっていた。そこには、かつて誰かが築いたと思われる壮大な遺跡が眠っているはずだった。その遺跡には、聖霊の力と伝えられる強力な遺物があると噂されていた。テルヘルはそれを手に入れるために、ラーンとイシェを利用している。彼女にとって、聖霊は単なる伝説ではなく、復讐を果たすための鍵となる存在だった。
「さあ、進もう。」
テルヘルの声が、洞窟にこだました。三人は闇の中へと足を踏み入れた。