ビレーの酒場「黄金の蛇」は、いつも通り活気に満ちていた。ラーンが豪快な笑いを上げると、イシェがため息をつきながらカウンターに顔を伏せた。
「また借金か?」
「ああ、でも今回は違うんだ!あの遺跡の奥深くに、聖なる光を放つ宝石を見つけたって話なんだよ!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「聖なる光?そんなものがあるわけないだろ。ラーン、そんな話を信じるのはやめなさい。」
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女はいつもより表情が険しく、黒いマントを深くかぶっていた。
「何かあったのか?」ラーンの問いかけに、テルヘルは言葉を濁した。「大穴への手がかりを得たかもしれない。だが、危険な場所だ。お前たちには無理かもしれない。」
ラーンは興奮気味に立ち上がった。「何だって?どこだ?すぐに連れて行け!」
イシェはラーンの腕を抑えた。「待てよ。何が危険なのか、テルヘルが教えてくれない限り、我々は行くべきではない。」
テルヘルは深く息を吸い、「聖域と呼ばれる場所だ。かつてヴォルダンが支配していた時代に、神々への信仰が盛んだった場所で、多くの聖なる遺物があったと言われている。だが、今はヴォルダンの残党が守っているという噂だ。」
ラーンは目を輝かせた。「聖なる遺物か!あの宝石もそうなのか?よし、行くぞ!」
イシェはため息をついた。「ラーン、待てよ…」
しかし、ラーンの決意は固かった。彼はテルヘルと共に聖域へと向かうことを決めた。イシェは彼らを止められず、ただ見送ることしかできなかった。聖域への道は険しく、危険に満ちていた。そして、そこで待ち受けていたものは、想像を絶する恐怖だった。